脇汗の量・悩みを軽減する『腋臭症ボトックス治療』

冬場の暖房が強い部屋だったり、 春先からだんだん気温が上がってくると、 ワキの汗ジミが気になりませんか? また、汗の量や脇のニオイが気になっている人も多いのでは? なかなか相談しにくい悩みですが、クリニックなら解決策が用意されています。 メディカルトリートメントで脇汗の悩みを解消しましょう。 今回は、脇のボトックス治療についてお届けします。

教えていただく医師
教えていただく先生:スキンリファインクリニック 銀座院篠原秀勝院長

URL:http://skinrefine.jp/about/ginza/

*「ボトックス注射」の正式な治療名は「ボツリヌス治療」。医薬品の名称「ボトックス(米国での名称)」および「ボトックスビスタ(日本での名称)」から世間では治療名としてボトックスと呼ばれることの方が多いため、「ボトックス」として記載。

Q.そもそも汗の役割とはなんですか?

A
一番の目的は体温調整です。
一部の汗は性フェロモンのような役割を持っていたと考えられています。
また大昔は、人間も野生の生活だったので、木登りで手足のグリップ力を高めるというか、ちょっと汗が出たほう木にも登りやすかったなどの機能もあったかと思われますが、今では体温を調整する役割が主ですね。

Q汗は出る部位によって、何か違う点(量・成分など)はありますか?

A
基本的に、体温調整のために出る汗は『エクリン汗腺』といいます。
性フェロモンのような役割を担うのは『アポクリン汗腺』です。
両方の性質を持っているようなものも一部あるといわれていますが、ざっくり言うと体温調節のエクリン汗腺と性フェロモン作用に関係するアポクリン汗腺の2種類があります。

アポクリン汗腺について、もう少し詳しくお話しましょう。
暑くなると汗が出るのは普通。しかし、すごく寒い状況でも精神的に緊張すると、例えば舞台や大勢の人前で発表しなくてはいけないような状況になると、冷や汗が出ますよね。
アポクリン汗腺はそういった興奮や緊張などの精神的な影響を強く受けています。

体温調整を担うエクリン汗腺は全身に分布しているので、いたるところにあります。アポクリン汗腺はワキの下と外耳、外陰部など、身体の限られた部分に分布しています。脇が臭い、いわゆる「腋臭」の人はアポクリン汗腺から出る汗が関係しています。

Q腋臭を及ぼす汗=アポクリン汗腺から出る汗自体が臭いのでしょうか?


汗そのものにはニオイはありません。アポクリン汗腺の汗もエクリン汗腺の汗も、ニオイはない。しかし、汗にはアミノ酸とかミネラル、脂肪酸などの成分が含まれていて、アポクリン汗腺の汗に含まれるそれらの有機物を、皮膚の表面の雑菌が分解したときに臭くなるんですね。汗そのものは臭わないけれど、出た汗を雑菌が代謝することでニオイが発生します。

Q「腋臭」がある人とない人がいますよね。同じように汗腺と雑菌があるのに、ニオイ方が違うのはなぜですか?

A.
主にアポクリン汗腺から出る汗の量が多いか、少ないか、ですね。
言い換えれば、アポクリン汗腺が強いか弱いかの違いです。
誰でも脇の下にはアポクリン汗腺を持っているわけですが、その働きがすごく強い・活発な人は雑菌による代謝産物が多く作られるためニオイます。日本人の場合はアポクリン汗腺の活性がそんなに強くないので、比較的腋臭の人は少ないと言われています。人種によってアポクリン汗腺の活性は異なります。

Q.自分の両親や血縁者が「腋臭」だとそうなりますか? 遺伝的要素が強いのでしょうか?

A.
遺伝的要因があることが分かっていますが、両親のどちらか、あるいは親戚にいるとしても、必ず遺伝するというわけではありません。

Q.汗の量は人によって違うものですか?

A.
はい、違います。
体温が常に高い人や低体温の人もいるでしょうし、筋肉が多いとか太っているとか、そういう影響もあるでしょう。筋肉が多いと基礎体温も基本的に高くなり、基礎体温が高い人のほうが汗をかく量が多くなると思われます。

Q.貴院に来院する患者さんの汗に関する悩みには、どのようなものがありますか?

A.
汗の悩みで来院する患者さんは多いですよ。汗をすごくかく、しかもたらたらたれるほど。もちろんニオイの悩みもあります。汗の量かニオイか、どちらかで悩まれている方ですね。

Q.部位でいうと脇の悩みが多いですか?

A.
そうですね。あとは、顔から出る汗の量がすごいので気になるという悩みも多いですね。

Q.貴院へ汗の悩みで来られる患者さんは世代でいうとどのくらいですか?

A.
脇を気にする方は、20代、30代など比較的若い人が多いですが、40代以降の方でも治療を受けられる方はいらっしゃいます。
洋服の汗じみが気になるという悩みでいらっしゃる方とか。

Q.貴院での、脇汗治療はどのようなことをされますか?

A.
脇汗対策としては、一番シンプルなものは塗り薬ですね。いわゆる制汗剤です。その次は『ボトックス』治療。また、当院では用意していないですが、汗腺自体にレーザーを当てて汗の量を減らすという施術もあります。あとは、手術で汗腺自体を取ってしまうという方法もありますね。

★制汗剤
ニオイと汗の量を抑える両方に作用。

★ボトックス治療
エクリン汗腺対応。
興奮などに関係して出るアポクリン汗腺は神経が違うので、厳密には完全には止められません。ニオイは若干抑えられます。
基本的に『ボトックス』はエクリン汗腺に作用するため、汗の量を減らすのに効果的です。

Q.ちなみに、顔の汗の治療法はどのようなことをされますか?

A.
やはり『ボトックス』がいいですね。本人が気になっている部位に注入しますが、多くは汗が出やすい髪の生え際に直接打ちます。

Q.『ボトックス』を使用した脇汗治療は、どのような効能効果があり、どのように作用してその効果が得られるのか、教えてください。

A.
『ボトックス』は、神経に作用します。
脳から神経は木の根っこみたいにつながっているんですね。汗をかくというのは意識的なものじゃないですけど、体温が高いから汗を出せという命令を脳が出す。その脳からの発汗しなさいという神経の伝達、信号、シグナルを『ボトックス』がブロックします。指令が届かなくなるので、汗が止まるんです。顔の場合のボトックス治療も同じです。

Q.神経をブロックして汗を止めるということですが、本来出る予定だった汗を出ないようにしても大丈夫ですか?

A.
特に問題ありません、大丈夫です。
汗の量が減ったとしても、脇以外のほかの部分の汗腺から、本来、脇から出る予定だった汗が出るので、肉体的には負担がありません。

Q.脇から出なかった汗は、尿から出ると聞いたことがあるのですが?


汗も尿も血液の成分に由来しますので、そのように解釈することもできるかもしれませんね。ただ、発汗の役割が体温調節であることを考えると、尿に変換するよりも、他の身体の部分から汗として出した方が効率が良さそうですね。

Q.『ボトックス』を使用した脇汗治療は、どのような方にお勧めですか?

A.
汗の量が多い。洋服に汗ジミができて困る、という方ですね。

Q.脇のどこに、どのくらいの量の『ボトックス』を打つのでしょうか?

A.
だいたい決まっていて、片方の脇、脇汗が出る範囲50~100単位という基準量を使用します。脇毛が生えている範囲に細かく打ちますから、何十箇所になりますね。

「美容クリニックの治療が怖いものというイメージをお持ちの患者さんもおられます。その恐怖心を少しでも緩和し、リラックスして治療を受けていただけるよう、最近ではあえて白衣を着用せずに治療をしています。カジュアルに見えますが、治療の腕はたしかですのでご安心ください」と、篠原先生。

Q.『ボトックス』を細かく打つ理由は何ですか?

A.
脇の下の皮膚の厚みは約3ミリ、その皮膚の中にエクリン汗腺があります。
注射を打つと、水面に波紋が広がるように周辺に薬が広がっていきます。皮膚の中にエクリン汗腺がありますから、エクリン汗腺のある皮膚の中に薬が広がるように打たないといけない。プスリッと皮膚を貫通して脂肪層まで打つと、皮下脂肪の層では広がるけど皮膚の中では広がらないのです。だから、皮膚の中でじわじわ広がるために、浅い部分に打たないと効果が出ない。ですが、皮膚の中だと実はそれほど広がらないので、細かく広く打つほうが効果的ということです。

Q. 『ボトックス』を使用した脇汗治療は、このような症状が出ている、もしくはこのような肌質の人には向かない、などはありますか?

A.
基本的に肌質も体質も関係ありませんが、以前アレルギーがあったとか、妊娠・授乳中は『ボトックス』を控えましょうとはお伝えしています。
どういった悪影響が出るかわかりませんので、おすすめしていませんね。
また、神経や筋肉の難病指定の持病がある人は受けられません。

Q.『ボトックス』を打つ量は、どの患者さんも同じですか?


体の大きい、小さいで違ってきます。面積が違いますから。ですから、それぞれ患者さんによって調整して打ちます。

Q.痛いのでしょうか?


注射ですし、何回か細かく打っていきますから多少痛みはあります。
ただ、塗る麻酔は用意していますので、希望される方には麻酔をします。

Q.ダウンタイムはありますか?

A.
少し内出血することはあります。
ただ、脇の下は人に見せる場所じゃないですから、内出血したところでそれほど問題はないと思います。内出血は1~2週間で必ず消失します。

Q.『ボトックス』は打ってすぐに効果が出ますか?

A.
効果が出るには数日かかります。
ですから、汗ジミが気になるシーズンのちょっと前に治療をするといいですね。

Q.『ボトックス』の治療を継続していると、自然と脇汗が減るのでしょうか?

A.
残念ながら、ボトックスをしないでも汗が出なくなるという事はありませんので、脇汗が気になるシーズンの前に、定期的に受けに来て下さる方が多いです。

Q.治療の時間や料金、持続期間などを教えてください。

A.
両脇で¥60,000。
診察&説明に20~30分。ご要望があれば、塗る麻酔の時間が30分。
実際に『ボトックス』を注射する時間は5分~10分。
効果の持続力は、一般的には3~4ヶ月となっていますが、人によっては半年ほど汗が抑えられることもあるので、長くて半年ですね。

(本サイトの金額は全て税抜き価格です)

取材・文:中尾 慧里 / Eri Nakao

ビューティライター / チャイルドボディセラピスト
スキンケア、メイクなどの美容や健康に関する取材、執筆を中心に活動。雑誌、ウェブ、美容メーカーのホームページやリリースなど多岐に

関連エントリー